現代の公団住宅
1925年
昨夜、ドイツ人学生が主催している読書・講演会の招待に応じて、建築家アドルフ・ロースが地元の工芸博物館に集まった満員の聴衆の前で、現代の公団住宅に関して講演を行った。建築家ロースはこのテーマについて、三つの観点から検討を加えた。一つ目は心理的な側面、二つ目は社会的な側面、三つ目は技術的な側面からである。公団住宅に関する感情的な前提に関して、ロースは次のように語った。
「今日の大半の人間が苦しめられている魂の病は、破壊する仕事が欠如していることにあるのです。この欠如を感じている多くの人々は、郊外のシュレーバー菜園へ行くべきだということを内心感じていらっしゃる。というのも、普段工場やオフィスで毎日行っている純粋に建設的でしかない仕事を、農作業で破壊の側面を補完することができるからです。シュレーバー菜園での活動は様々な側面が考えられますが、単なる経済的な問題と考えるべきではないのです」
シュレーバー菜園を作るということの根底にあるのは、ロースにとって間違いなく側面である。それは農作業がすぐれて破壊をもたらす活動と見なされる限りにおいてのみである。建設的な仕事には当然重要で義務的な役割がある。だからこそ農業はもっとも自然であり、あらゆる観点から見てもっとも健康で人間的な活動だと評価されるのである。
公団住宅を社会的に作り上げていく点に関し、建築家ロースはこう述べている。
「社会がシュレーバー菜園を開拓するために一部の土地を与えることができるのは、野菜を栽培し、与えられた土地をしっかり守る意欲のあるひとたちに限ります。そして公団住宅が増加していく際に、人口過密問題と同時に他の社会問題を考えながら、何を考え、どのように展開していくのかを考える必要がある。というのも、将来的に二つの階級、つまり労働報酬のすべてを市場で使い果たす階級と、報酬の一部だけを市場で使う階級(公団住宅の住民はこちら側)が生まれてきてしまう。その危険を軽減するために、国は公団の住民に蓄えを支出させ、風をさえぎり、農作物の生産量を増やすために必要な壁を作らせることができるようにするのです」
建築家ロースが公団住宅用建物の技術面、建築面に関して述べたことに対する判断は専門家にお任せする。もっともその内容の多くは専門家でなくとも理解できることであり、納得のいく話だった。ロースが専門的な言及に長時間さくことで通常素人には理解できなくなるような、無味乾燥な議論を避けたことは評価すべきだろう。
r.st.