本書は多くが文字のみで構成された和算書である。内容は、分度器やコンパスなどの用具の説明、乗除法、円周率、等積変換、金・銀・米、などの換算、九九、天文、などである。
本書の文章は、凡例と建築に関する項目の内容のみをテキスト化し、残るものは項目タイトルを挙げるにとどめる。文章はすべて書き下し文で整然と書かれているので、そのままテキスト化する。構成は項目タイトルの後に文が続くかたちであり、タイトルの前には通常区切りとして○が挿入されている。テキスト化においてもそれに従い、項目タイトルの前には「○」を挿入する。又それとは別に図や表のタイトルが大きい文字で書かれている場合があるが、その場合は「○」のかわりに「・」で表記することとする。また、下図1のような箇所は「正玄五八七九ハ{句則/宇立}為実」と記し、下図2の四文字目の文字は「カケル{トキ}朱引圖ノ如ク」と記した。
<本文>
凡例
此尺算術ハ暦算全書ノ度算尺例十線ノ一法ニ因テ起ル所也十線{謂}之比例尺紅毛人{謂}之プリイシス{ナル}十線アリ一曰平{分}線二曰平方線三曰更面線四曰立方線五曰更{體}線六曰割圓線七曰正弦線八曰切線九曰割線十曰五金線等也右十線ノ内平分線ハ{分}寸ヲ等{分}ニ為ス故ニ平{分}線ト云線トハ絲スシ也十様ノ絲ニテ諸算ノ術ヲ為ス故線ト云蓋茲ニ今規ト曲尺トヲ以テ八算見一等ノ算ヲ為スフト木匠ノ一助トスル也其術{甚}簡易ニシテ然モ木匠常ノ具ヲ以テスル故ニ最便利ナリ左ニ出ス所ノ圖解ニ因術ヲ得ル{ノモ}ハ其餘術モ可得之但尺算ハ分秒ニ至テ不盡コト有リト雖モ木匠ノ術ニハ分秒絲忽ヲ不用イヘトモ可足乎分度矩ハ紅毛人謂ノハルフキルケル云此術ハ方円{順}度ニモ町間術ニ用ル法ヲ出ス茲ニハ八算術{并}天度{畧}ヲ量ル等ノ術ニ用ル{フ}ヲ出ス籌算術ハ八算見一平法立方乗除ノ算術ニテ最分{秒}巨細ニ其{数}ヲ得ル術也尺算ニテ分秒不及既知之為ストキ比籌算ヲ以テ為ヘシ籌算術ハ算木或ハ十露盤又九九ノ算ヲモ用ルコト無ク准{数}字ヲ{書}徴シテ算ヲ為術也能手煉スル{トキ}ハ空算ニテ如何ヨウノ算ヲモ可為術也甚竒術ナリト雖モ此術ヲ知ル人希ナリ此算法本ハ囘囘國ノ算法ナリト云フ紅毛國ヨリ傳ヘ来ル也
寛政元年巳酉冬太呂上旬
東都大匠 溝口内匠源林卿 著
・分度矩之圖
・曲尺二枚算術ニ用ル術
・規之圖
○用法
○尺算乗法
○同除法
○分割之術
○小間割之術
○材木尺角廻之術
假如長三間幅二尺五寸厚一尺二寸ノ材アリ是ヲ二間ノ一尺角ニシテ木数何本ニナルト云フ{トキ}ハ規ヲ二寸五分{二尺/五寸}開キ一尺ヲ弦トシテ定尺テ一尺二寸ヲ弦トシ底ヲ量レハ三寸アリ又三寸ヲス一尺ヲ弦トシ三寸ヲ底トシテ定尺三寸ヲ弦ト為シテ定ヲ量レハ九分アリ其九分ヲ以二寸ヲ弦トシ九分ヲ底トシテ定尺一尺ノ底ヲ量レハ四寸五分トナル即二間木一尺角ニシテ四本五分トナル云ヲ知ル也
但シ曲尺ヲ並へテスル{トキ}ハ三尺ノ寸分不定其時ハ一尺一分ノ割合ニテ二分五厘一寸二分ヲ乗テ三分トシ右ノ如法シテ知ルナリ又三尺五尺ニモ及フ{トキ}ハ半分ニシテ乗合後ニ二分ヲ合セテ数ヲ得ル也
○勾股弦之術
・右図解
○勾股弦勾配之術
○勾配之術 勾配延ヲ知方也
假如梁間三丈{五間/ナリ}六寸勾配ニシテ宇立ヲ知ルニハ先ツ一尺ヲ為弦六寸ヲ底トシテ定尺三丈ナレハ三寸ヲ弦トシテ其底ヲ量レハ一寸八分アリ即六寸勾配ノ宇立一丈八尺ト知又
同平ノ延ヲ知ニハ勾股術ノ如ク曲尺一枚ノ短カ手ノ目通リヲ一寸八分トシテ規ノ一方ヲ當テ又一方ヲ三寸三丈ノ所ニ當テ其規ノ開キヲ見レハ三寸五分アリ即平ノ延三丈五尺ト知ル又同隅ノ延ヲ知ルニハ右ノ法ノ如クシテ平ノ延ヲ知ハ三丈ナレハ規ヲ各ノ三寸ノ所ニ當其規ノ開キヲ見ル也即チ四寸二分五厘アリ隅平ノ延四丈二尺五寸ト知ル也又隅木ノ延ヲ知ニハ宇立ノ{丈二分/タケヲフタブン}上テ規ノ一方ニ當一方ノ三寸ノ所ニ當也
・六寸勾配宇立ヲ知ル術
・隅木之延ヲ知ル
・平之延ヲ知ル
○平円和周徑術
○平方積得加倍術 木ト曲尺ヲ以テスル術ナリ
○開平方
○方面積ヲ大小ニ分ル術 并 方面ノ積ヲ延積トスル術
○製尺之術
○堂社繁垂木下端知寸分術
假如大間一丈二尺{タルキ}数二十四枝此{タルキ}下端大サヲ知時ハ規ヲ一寸二分{大間/ノ一}{丈二/尺}開キ二寸四分{{タルキ}数ノ/二十四}ヲ弦ト為定尺一寸ノ底ヲ量レハ五分二厘八毛アリ是ヲ垂木定法二十二ニテ除也規ヲ五分二厘八毛ニ開為底二寸五分ヲ為弦テ定尺一寸ノ底ヲ量レハ二寸二分六厘アリ即垂木下端大サト成ル
○假如長二間木八寸角六十本有リ是ヲ同長五寸角ニ替ル時木数何本ト成ト云ヲ知ル 五寸角 百五十三本一分也
術規ヲ八分{八寸/角}ニ開キ一寸ヲ弦トシテ八分ヲ底トシ定尺八寸ノ底ヲ量レハ六寸四分アリ{即八八/六十四}是エ木数六十本ヲ乗ル也規ヲ六分四厘ニ開キ一寸ヲ為底定尺ヲ六寸ヲ為弦ト底ヲ量ハ三寸八分四厘ト成ル又五寸角ヲ乗合{々/々}二寸五分ト為テ是ヲ法ニ立テ規ヲ三寸八分四厘ニ開キ二寸五分ヲ為弦ト定尺一寸ノ底ヲ量レハ一寸五分三厘一毛アリ即五寸角ニテ百五十三本一分ト成ル也
○差分之術
假如長二間木一間木相交テ数百二十本アリ是ヲ間ニ延テ百七十間ト成ル凡内二間木何本一間木何本アルト云ヲ分知スルニハ木数百二十本ニ二間木ヲ乗ル也即規ヲ一寸二分{百二/十本}ニ開一寸ヲ為弦定尺ヲ二寸ノ底ヲ量レハ二百四十間トナル此内ニテ延タル間数ノ百七十間ヲ減ルハ七十間ト成即一間木ノ数ト成ル残テ五十本ハ二間木ノ数ト成ル也
○分換之術
○方圖解
○材木知價術
假如材二丈六尺アリ此價七十五匁也ト云其内六尺五寸〓テ換ル{トキ}此代銀ヲ加ルニハ二寸六分{二丈/六尺}ヲ弦ト為シ七十五匁ヲ底トシテ定尺六寸五厘ヲ弦トシテ底ヲ量レハ十七分八厘五毛アリ即代銀十七匁八分五厘ト知ル或ハ七寸五分ヲ弦トシテ二寸六分ヲ底トシテ定尺規ヲ以六分五厘ニ開キ等弦ヲ求ルモ又同術也{一寸七分八厘/五毛トナルナリ}此術モ数ヲ得ルニ分秒多クシテ見ヘ難キ{トキ}ハ二十六分ヲ一位進メテ二尺六寸トシ{一寸/一尺}七十五分{一分/一匁}ヲ倍シテ一尺五寸トシテ量ルモ又可ナリ又本文ノ如ク量テ分秒分明ナラサル{トキ}ハ先ツ五寸ノ代銀ヲ量リ数ヲ得テ再ヒ六尺ノ代銀ヲ量テ合之テ知ルヘシ
○銀目ヲ金ニ直ス方
○省百ノ銭ヲ以正百銭ト為ス法
○正百銭ヲ以省百ノ為百銭法
○金銀時ノ相場算
○米相場算
○和銀差算
○暦ノ節氣晝夜分刻割ノ術
・八線之圖
○天度分秒之算
○分度矩ヲ以天度ヲ量術
○地圖之術
○不等ノ地圖ヲ換ル分度矩之術
○逆磁針之法
○日月大小之度
○圖之周徑定法
○緯度之表
○表之解
・籌算術籌式之圖
○乗法
○乗法之圖
○八線術 除法
○除法 乗法
○籌式数畫冩位之方
○除法
○右乗法
○除法零ヲ出ス行
○乗法 除法
○除方零之籌加圖解
○商見位表 第一位之方
○商見位表 第二位之方