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p73
・大斗大サヲ極テ十二角面之四角ニ當ル規術
大斗ノ大サヲ墨引ノコトク圓徑ニシテ半圓ヲ二分シテ初心ヲ得テ三度如圖シテ一二角円ノ半徑ヲ得下ノ如圖ノ三円トナシ一二角面トスレハ大斗ノ大サ四角面ノ所ニ當ルナリ
・十二角圓中ニ三斗ヲ出ス規術

<解説>この術は大斗の大きさ(=幅)から、円とそれに内接する正十二角形を用いて肘木やその上の三つの斗(左右が巻斗で中央が方斗であるが、本書では三つとも巻斗として扱われている)の形を決定する方法である。上図は大斗の幅から正十二角形が内接する円の半径を出す方法であり、下図はそれによって各部位の形を決定している。上図は、まず大斗の幅を直径とした円を書き、十字(図の点線)を引く。次に十字点線左側の半分の点にコンパスの針を置き、十字上端まで開いて十字右側へと弧を描き、その交点と十字上端の長さが下図で用いる円の半径になる。
図1はこの方法をなぞったものであるが、青線は意図が不明である。


図1

p74
・同術
此術速ニテ真理也
大斗ノ大サヲ三角面ニシテ如圖一面ヲ二ツニ割是ニ斜ヲ設テ真ノ處ニ規ヲ立テ圓ヲカクレハ大斗ノ大サ四角面ノ処ニ當
蒔斗ノ大サハ大斗下端ノ△ト圓ノ上ハノ△トノ間ヲトリテ圓ノ下ハニ心ヲ當テ両圓ニカクレハ蒔斗ノ大サトナル △印ノ如クシ又其○ヨリ大斗ノ下端ヲ換テ△印ノ如ク両圓ニカクレハ肘木ノ下ハノ大サトナル 大斗肘木ノ盛ヲ定ムルハ大斗三ツ割リノ一分ヲ取ルナリ 蒔斗肘木ノ下端ハ初ノ両圓ニカケル横徑ノ墨中ニ當ル也 但シ大斗肘木ノ盛ハ大斗ノ斗グリヲ除テ盛トス 両術可ナルヲ可用也 又曰大斗肘木ノ盛ハ上半圓ノアタリヲオサエ定ムルモ可也

<解説>図とその右の文は前項上図の別解であり、図の下から始まる「蒔斗ノ大サハ〜」という文は前項下図の作図法の説明である。この別解は前項大斗の幅とその他の部材を決める円の関係が、正三角形の一辺とそれに外接する円の関係と等しいことを示し、こちらの方が前項上図の方法よりも速く正確であるという。「蒔斗ノ大サハ〜」という文の内容は次の通りである。
「大斗下端と真ん中の円の上端までをコンパスでとり、そのまま針を真ん中の円の下端に持っていき、左右の円に弧を描くと交点が巻斗の幅になる。さらに大斗の下端と巻斗肘木の下端をコンパスでとり、同じ真ん中の円の下端に針を当て、左右の円に弧を描くと肘木の幅が決まる。大斗肘木の盛は大斗の盛の三分の一分上にずらしたものである。巻斗肘木の下端ははじめの左右の円に書いた横線にあたる。ただし、大斗肘木の盛は斗繰りを除く。〜不明〜。また、大斗肘木の盛は中央の円の中心から上へ半径の半分あたりの点をとってもよい。」
なお、この方法をなぞったものを図2に示す。巻斗の盛は記載されていないので不明である。


図2