平面構成においては、山際に添って配置された軸のずれた2つのボリューム、その
前に位置する外部空間があり、断面ではコンクリート、ガラス、鉄という材料による
構成だった。大きくみても、細部にしても統一されていることは、切断と接合を繰り
返していることであるように見えた。それらのスケールの違いによって、空間が規定
されていた。
例えば、穴、スリット、吹き抜け、既存との関係、建築内部にある壁などのよう
に、物質を切断するとその結果として空間が接合される、といった具合である。巨大
な一室空間にあったあの個室ボリュームさえ、地面と切り離されたかのような印象を
受けた。写真中央の盛り土と内部空間の間の溝は、断面的に切断されたもので、右手
の巨大なガラスは、空間の内部と外部を切断・接合する。これらの行為が繰り返さ
れ、全体としての建築物が構成されているように思った。
しかし、この全体においての構成が、写真左手の盛り土によって危うくなってい
る。エスキース段階ではあの土はなく、単にボイドが空いた状態だった。その状態で
あれば上記のシステマティックな構成が素直に成立するだろうが、あの盛り土によっ
て全てがうやむやにされているようだった。
ただし、その印象をふまえたとしても、ここで考えておきたいことは、やはりあの
場所においても切断・接合が行われていたのではないかということである。おそらく
このプロジェクトでは、鈴木氏が手を加えた建築物そのものとそれ以外、その関係性
が極めて重要であったように思う。その関係を、土を盛る行為によって切断・接合し
たのではないか。
当初の印象においては、建築そのものの部分として盛り土を考慮することは不可能
であったが、建築物とそれ以外との関係において、あの盛り土が成立しているのでは
ないかと思った。